6月6日、7日に行われた第九回日本の農業と食を考えるシンポジウムとそのプレイベントに参加しました。今回は新型コロナの影響もあり、オンラインでも参加可能となり、最大2000人の方々が参加したそうです。内容は、種、農業、食、環境、フラワーエッセンス、腸内細菌、土と腸について、農業従事者の方々の発表など、多岐にわたりました。また、東京会場では、日本豊受自然農の農場で作られた野菜や苗、種の販売なども行われました。
様々なテーマの中で種に関してのものが多く、元農林水産大臣の山田正彦先生、食の安全の研究家の印鑰智哉先生のお話や、「遺伝子組み換えルーレット」のジェフリー・M・スミス監督のインタビュー、2日目の最後に山田先生がプロデュースした映画「タネは誰のもの~種苗法改定で農家は?」も上映されました。
このシンポジウムと同じ頃、種苗法が改正されようとしていたのですが、今回は成立せず、次の国会に持ち越されることになったのをご存じの方も多いと思います。ここで、今回の法改正の問題となっている点をご紹介します。
農業では、作物が成長して種を付け、それを再び蒔いて同じ作物を収穫するという当たり前のようなことに、法律が関わってきます。かつては、種子法という法律で主要な農作物、米、麦、大豆の種子を国が予算を出して管理をし、各都道府県にその生産普及を義務付けていました。それが2018年に廃止されて、予算配分が他のものにすり替えられて、民間企業をそれらの種子の育成に参入させるようにしたのです。
一方、種苗法は、すべての農作物の新品種を登録して育成した人の知的財産権を守るための法律です。登録された品種から種を取って蒔いたり、さし芽などで増やしていくことは、認められていません。農家による自家増殖(自家採取と自家増殖の両方を含む)が禁止されている品目は2016年に82種だったのが、2019年には、387種となり、今回の改正案で、登録したものを自家採取して市場に出すことを一律禁止するという流れになってきました。今後、農家が自家採取を許可されていた種の品目が減ったり、自家増殖のやり方のさし芽やツルを伸ばすということができなくなる恐れが出てきました。その品目は、すべての農作物ではありませんが、今後増えていくことも予想されます。
この法律が成立すると、種の育成者が登録して権利を認められているものを他の人が勝手に作ったり、自家採取すると、最悪、訴えられて、1千万(普通の農家)から3億円(農業法人)の罰金が課せられてしまうという事態になるそうです。
日本で開発されたシャインマスカットやイチゴの品種が海外に流出し、勝手に作られてしまった、ということが起こったので、種苗法改正で登録し、育成者の権利を守るようにするという狙いもあるそうです。新品種を登録すると、輸出国と栽培地を指定できるようにして、それ以外の場所では流通を規制するというもの。
しかし、映画「タネは誰のもの~種苗法改定で農家は?」の中で種子島のサトウキビ農家さんが語っていましたが、もしこの法律が改正され、自家採取していたサトウキビの種を今後買わなくてはならなくなると、その金額が350万円ほどになり、経営には大打撃とのことだそうです。小規模農家や地域の農業が成り立たなく恐れがあります。又、イチゴやサツマイモは、育て方がランナーを伸ばしたりとか、茎を植え付けたりとかなので、それも自家増殖禁止で法に引っかかる恐れが!このやり方でないと、イチゴやおイモは増やせません。NHKの「野菜の時間」でもこのやり方を教えてます。自分で畑を耕さない農水省のお役人の方々は日本の農業を滅ぼしてしまいたいおつもりですか?なんて思ってしまいますよね。
今回、この法律を成立させようとした背景には、もともとTPPやFTAとの関係があるともいわれていて、海外の巨大種子会社が日本に参入しやすいようにしたかった、とも言われています。そうなると、日本の農産物の種が巨大な民間企業に独占されてしまうのでは、という懸念もあるそうです。現にインドでは、綿の種を毎年買わされるようになった農家が借金漬けになったという大問題が起こっています。今後、この法律がどうなっていくか注視する必要があります。
もう一つの問題は、遺伝子組み換え農作物です。現在、農業で使用される種は、固定種、在来種、F1(ハイブリッド)、遺伝子組み換えがあります。固定種と在来種の種は、収穫した後に蒔けば、再び同じ物、または、その土地に適応するものが育ちます。一方交配操作によって作られたF1は品質がそろったりしますが、一代限りで、仮に種を蒔いても同じものはできません。なので、農家は毎年種子会社から、種を買う必要があります。さらに、遺伝子組み換え種子(GM)に至っては、恐ろしい作られ方をしています。なんと、除草剤や殺虫毒素を種に組み込んで、できた農作物(トウモロコシ、大豆、菜種等)を食べた虫が死ぬようにしているのです。そんなもの口に入れたくない!と思うでしょうが、輸入されるGMトウモロコシは、家畜の餌として使われていて、今や、日本中の家畜が食べているのです。そして、その肉やミルクを人間が口にしているというわけですね。こわ~!
さらに恐ろしいのは、ゲノム編集による農作物です。作物自体の遺伝子を切ったり、つなげたりして操作して、従来よりたやすく品質を変えてしまう技術です。農産物以外では、魚にも使われて、身の付きの良い品種を作ったりもできます。EUでは、遺伝子組み換えと同等の扱いにするとしましたが、日本とアメリカは、届け出をしても表示しなくていいとしています。農水省は、ゲノム編集の種子でも、有機認証を与えようとしているとのこと。普通に食べるのをためらってしまいそうですが、今後、消費者が知らない間に、食卓にこれらの食品が出されるようになったら、怖いですね。
2日間たっぷりと日本の農業の種子問題にふれることができ、有意義な一日でした。なお、山田正彦先生は、ご自身のプロデュースした映画を1000円程度でDVD化することもお考えとのこと。お待ちしてます。
今回、会場で売っていた種をいくつか買いました。今年、蒔かない場合は、冷蔵庫に入れて保管するといいそうです。